超巨大地震に迫る―日本列島で何が起きているのか (NHK出版新書 352) [新書] / 大木...『超巨大地震に迫る 』
日本列島で何が起きているのか
大木聖子、纐纈一起著
評・横山広美(科学コミュニケーション研究者・東京大准教授)
震災後、「想定外」という言葉が連日、報道された。M9・0の
超巨大地震は、なぜ、地震学者にとっても想定外だったのか。
地震学でわかっていたことは何で、わからないことは何だった
のか。
そして地震がおきる国に暮らす私たちはどのような備えをすれ
ばよいのか。本書は3・11を経て激動の日々を過ごす、ふたり
の地震学者による「地震の科学の限界」と「防災教育の必要性」
に真摯(しんし)に向き合った本だ。
直前の地震予知ができないことはある程度知られている。しか
し東日本大震災では、地震学者も信じていた「長期予測」でさえ
も超巨大地震を言い当てられなかった。
地域によって異なる特性のある地震を過去130年程度の観測
からは十分におさえることができなかったからだ。また、大地に
蓄えられているはずのエネルギーがこれまでの地震によって解
放された値よりもはるかに大きい矛盾に迫っていなかった。
アスペリティモデルという地震のモデルによって矛盾を説明でき
ると信じたことが、思考停止を招いたのではないかと本書は指
摘する。
また、小学校での防災教育の例も興味深い。教室では机の下
にもぐればよいが、音楽室にいて譜面台と椅子しかないときはど
うするか。小学校6年生のある子供は木琴の下に隠れた。そして
これがクラスの議論になった。木琴は折れる、なら鉄琴はよいのか。
正しい答えがあるわけではない。状況ごとに判断して行動できる力
が必要なのだ。
近年、科学者の情報発信が重視され、評者も発見された科学的知
見を発信するのに努力してきた。しかし、わかっていないことや科学
の限界を示す活動はなかったといってよいだろう。震災は、そうした
意味で科学情報の発信の限界も示したのかもしれない。
地震学者の苦悩は深い。しかし限界は乗り越えるためにあるし、限
界と上手(うま)く付き合うことも必要だ。地震学者の今後の活動に期
待したい。
◇おおき・さとこ=1978年生まれ、東京大地震研究所助教
◇こうけつ・かずき=56年生まれ。同教授。
NHK出版新書 740円
(2011年9月12日 読売新聞)
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